水野一晴 MIZUNO Kazuharu
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現在の研究内容
ケニア山&キリマンジャロ
近年、温暖化とともにアフリカの高山の氷河が急速に後退している。また、その氷河の斜面下に生育している植物たちは、氷河のあとを追うように山をのぼっている。この氷河変動と植生の遷移について、気候・地形・土壌などの環境要因から検討している。
写真は、現在調査中のケニア山、第2の氷河であるティンダル氷河(左から1992年、1997年、2002年、2006年、2011年の8月)
氷河が溶けた後、最初に生育できる先駆的植物種、セネキオ・ケニオフィトウム。
ティンダル氷河の後退速度とほぼ同じ速度で分布域を前進させている。
右の写真はティンダル氷河の溶けたところから出てきたヒョウの遺体。放射性炭素年代測定(AMS)によって、約900年前のヒョウであることが判明。
約900年前は、 日本では平安時代末期にあたり、それまでの暖かい時代から寒い時代に移行する頃であり、その後19世紀までずっと寒かったためヒョウは氷の中で眠っていた。しかし、その眠りを覚ましたのは、20世紀に入ってからの温暖化である。
1958-1996年:(氷河の後退速度)2.9-3.0m/年、(セネキオ・ケニオフィトウムの分布域の前進速度)2.7m/年
1997-2002年:(氷河の後退速度)9.8m/年、(セネキオ・ケニオフィトウムの分布域の前進速度)8.8m/年
2002-2006年:(氷河の後退速度)14.8m/年、(セネキオ・ケニオフィトウムの分布域の前進速度)14.0m/年
2006-2009年:(氷河の後退速度)8.7m/年、(セネキオ・ケニオフィトウムの分布域の前進速度)10.3m/年
ケニア山のような熱帯高山には大型の高山植物が生育している。アフリカの熱帯高山(ケニア山、キリマンジャロ)は、日本の高山に比べ、風が弱く、積雪が少なく、夏冬の気温差が小さいために、このような大型植物の生育が可能である。しかし、昼夜の温度差が激しいため、夜間の低温に耐えうるような構造をもっている。写真左はキク科のジャイアント・セネシオ。
写真右のジャイアント・ロベリア(ロベリア・テレキイ)は、中が空洞になっていて、下から3分の1ぐらい液体で満たされている。夜間に液体が表面から凍っていき、そのときに発する潜熱によって上部の空間が暖められるという構造になっている。
キリマンジャロにおいても近年急速に氷河が後退している。
キリマンジャロの氷河分布は、1992年8月と2009年8月に山を登って調査を実施し、2002年8月にはセスナをチャーターして、空から氷河分布を調査した。
(写真左)キボ峰山頂の氷河(2009年)、(写真右)2002年にセスナからキリマンジャロ山頂を空撮したもの。キボ峰山頂部のカルデラ内の火口丘。中央に火口のロイシュ・クレーターがあり、さらにその内側にAsh Pitがある。最高地点のウフルピークはカルデラの縁辺部(写真奥)にあたる。
ナミブ砂漠
ナミブ砂漠において、環境変化と植生遷移の関係を調査している。
ナミブ砂漠にはクイセブ川という季節河川があり、通常水は流れていないが、1年に数日から数十日のみ水が流れる(水が流れることを洪水とよぶ)。
このクイセブ川沿いには森林があり、いろいろな生物が住み、また人々が居住している。
しかし、近年、洪水頻度が減少することにより、あちこちで森林が大量に枯れるという現象が生じている。この洪水減少と森林枯死の関係を生態学的に解明している。
調査は、「半乾燥地域における環境変動と人間活動に関する研究」(2001-2004年度、文部科学省科学研究費、基盤研究A、研究代表者・水野一晴)、および「南部アフリカにおける「自然環境-人間活動」の歴史的変遷と現問題の解明」(2005-2008年度、文部科学省科学研究費、基盤研究A、研究代表者・水野一晴)の研究プロジェクトによって行われている。
ナミブ砂漠。礫砂漠と砂丘地帯(砂砂漠)の間にクイセブ川がある。その季節河川沿いに森林があり、点々と集落が存在する。
ナミブ砂漠には時折、海からベンゲラ海流という寒流の影響で霧が発生し、それが生物にとって重要な水分供給となっている。